上海は想像よりやっぱり、すごかった。
街中の地面を掘り返し猛烈に工事が行われるこの街は一見ぴかぴかに輝く成長をとげつつある。あの未来みたいなテレビ塔。リニアモーターカーが走り人々は高級ブランドを文字通り買いあさり、1500円のケーキセットをオシャレカフェで平らげる。
大きな声で話しながら。
みんな浮かれているようであたしも熱にやられて
ばかみたいに楽しんで帰るところでした。
でもそんな時に、ある若者と会いました。
搾取されまくりのハードな労働環境でチャンスゲットのスタートラインにすら立てない農村出身の。
「上海出身の人はこんなひどい仕事しません。」という彼の日々の話を聞いて上海の現実を垣間みて、自分にできることはなんだろうって考えたけどまだぜんぜんわからない。
月給3万円で毎日くたくたになるまで働いても何も残らない。日本に行って勉強したくても給料50ヶ月分の大金がビザをとるために必要だと彼は言う。明日の食べ物の心配しかできない。国の外にも出られない。出口が見えない。将来の夢もないと言う彼にあたしも何も言えない。
あたしはマリーアントワネットみたいに自分の暮らしと違うひとびとのことなんてきっとなんにもわかってない。世界のことはもちろん、自分の国のことすらも。ほんとうになんにも。
上海から電車で20時間の河南省出身の彼は独学で覚えた日本語で言いました。
「テレビで上海を見て憧れて来ました。外国人がいてきれいでかっこいいと思いました。でも上海には何もありません。河南省の麺はとてもおいしいです」
あたしにできることが何だかわからなくて日本語/中国語会話の本をあげたらすごーーくうれしそうでした。ペンが剣よりも強いことを祈りたい。こころから。
彼が言うところの高い外国の服を着て外国の靴をはいて外国の化粧品を使い外国の学校に行って外国のカメラで写真を撮ってるあたしのあたりまえは彼にはちっとも、あたりまえじゃない。