日頃えらそうなことを言うわりに、あたしはばかみたいに試練に弱いなと思う。弱いというよりは、慣れていない。大きな病気もしたことがなく、大きな失敗もないままここまで来てしまった。ゆえにこういう時は非常に脆弱である。撮影をすっきりと終えて帰った部屋を見渡したら着た服が日付順にレイヤーになって椅子にかけてあった。何日分だろう。迷って選んだいろんな色のタイツの重なりもあいまってすごいミルフィーユである。冷蔵庫には使い切らなかったアスパラがふにゃりとしている。あたしがしょんぼりとしていた日々の分だけ。あちこちに花瓶は空のままおいてある。
こういう部屋の人あたしスキじゃないわ。というかこういう人ほんとスキじゃない。こんなんじゃいけない。光が差し込むうちに全部洗濯する。アスパラはあやまりながら処分。トルコキキョウとか買いにいこう。なんか白くてやたらフェミニンなやつ。
ちょっときついことが重なって、たのしみにしていた朝霧にも行けなくなって、自分でもあきれるくらいにしょんぼりとしていた。体育座りをしかねないムードで。ごはんを作らなくなり、本も読まなくなり、ヨガもしなくなった。たった数日のことだけど、それだけで部屋はぜんぜん違う場所になる。あたしと比例してしょんぼりしていた。まきぞえをくってしまってかわいそうに! 日々天才的にはげまし続けてくれるトシオくんも! ごめんね&いつもほんとうにありがとう。
無意識のうちにあたしは自分をかわいそうに思っていたと思う。どうしてあたしが、なんて思っていたと思う。ださすぎる。かわいそうになんて思ってるうちは服のレイヤーは増え続けるだけだし部屋はますますあたしに似てくる。
以前にも引用したことがあるかもしれないけれど、村上春樹さんの『ノルウェイの森』の中で永沢さんという異常にタフな先輩が僕に言った言葉が急に浮かんではずかしくなった。永沢さんは知り合いじゃないけど(あたりまえだ)大学の時からずっと繰り返し読んでるのでほんとうの先輩のようだ。何も終わってなんかいないし、何も失ってないのに。むしろあたしを囲むひとびとに感謝が止まらないきっかけになったくらいなのに。
ああほんとださかったわ、あたし。
はげましてくれたみんなにほんとうに感謝しています。
とくに大ピンチを救ってくれたやまじさんとみえこさんに。
永沢さんいわく、
「自分に同情するな。 自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」
はい!!