ああまぼろしのように消えていくよ。頭の中のどこかに小さいけれどどうしようもなく決定的な穴があるのだと思う。あたしの記憶はじわじわと日々漏れて消えていく。たった半年前のことも手触りがが薄れていく。一生忘れない、と思ったことまでもいとも、簡単に。
愛おしい面影だけが細かく揺れてチェシャ猫のほほえみのように夜空に浮かぶ。
宇宙人に脳みその一部をみそ汁にされてしまったのではないかと、本気で思う。
でも悲しくはない。ちょっと、せつないけど。どんどん失っていくんじゃなくて、どんどん、新しくなっていくのだと思っている。いつも、つるりと新しく生まれ変わるみたいに。赤ん坊のような顔をして。赤ん坊のような脳みそで。ひとつ手放したあと、ひとつ得ている。きっと。
写真は宇宙のもくずと消えたかつての光の手がかり。重要な、手がかり。
形は消えても強くあり続ける日々の。
そして、新しい光のほうへ、進む。びゅんびゅんと。