しあわせもおどろきもある日突然やってくる。だからいつでもすぐにでも対応できるやわらかい体でいないといけないのだ。じゃないと興奮のあまり肉離れをおこしちゃうかもしれない。
あたしが世界で(そう、世界で)一番撮りたかったひとの撮影が急に決まって、こめかみの血管が切れたかと思うくらい興奮する。(スギヤマさん、ほんとうにありがとうございます!!!)
ああ。どうすれば。どうもしない。できることはいつもよりも長く柔軟をして瞑想することくらい。
ヘッドフォンで何百回聴いたかわからないあの声で彼女は話し、明快な言葉で話し、美しい姿勢でこちらに向かう。常に進み決して守りに入らないひとだけが持つオープンさで笑う。あああこれがほんとうになったんだと思うと手が震える。手が震えるような撮影はひさしぶり。胸がざわつく撮影は数多くあっても手が震えるのは。
今日トシオくんと電車で移動中、ふと「今なんで笑ってたの?」と聞かれる。笑ってたつもりなんかなかったけど。あらぬ方を見つめてやたらうれしそうに微笑んでいたと。どちらかというと、にやにやと。あぶないひとである。あまりにしあわせだったので頭の中ですべての秒を反芻してしまっていた。あたしが言った言葉に彼女があの笑顔で答えてくれた、最後にあたしの目をみてしっかりと手を握ってくれた、そんなエヴリィセカンドを。ああしあわせだった。そして次に会えるときまでにもっと、彼女の高さに近づけるあたしでいよう。そんなふうに思っていたのだ。
(にやにや)