ここ数週間の濃く熱く厚い日々を言葉にすることはとてもとてもむずかしい。速度と密度と出会いの数と。突風みたいに過ぎ去る日々はいつも脳裏にいくつかの妙にクリアな写真みたいにイメージを残し、あとは巨大なかたまりになって宙に浮かぶ。そのかたまりはなにか、色みたいな匂いみたいな音のような、強い存在感をまとっていて、具体的なできごとはその中にとくとくと溶けている。そんなかんじ。
だいじなことは、その色と匂いがとびきり素敵だってこと。
すべてがそのかたまりにどんどん吸い込まれて行く前に(それもいいのだけれど)ここに記しておこうと思う!いま、鳥の鳴き声と共にサイに激しく起こされ、そう思い、突然PCを開いたのだ!!
岡山の『新世界』が始まり、多くの方が来てくださってほんとうに感激しました。岡山はもちろん、四国や鳥取、広島、関西などから来てくださって、言葉にできないくらい、うれしかった。私は、直接手にとって触れられる何かをいつも求めていた/いるんだなってつくづく改めて思いました。こうやって、ひとと会って言葉を交わし握手したりハグできること。そのひとつひとつが、生きているという実感を作るんだな、と。なんかやたらおおげさみたいだけれど、おおげさでなく。
そして福岡でも縁あって『新世界』を展示させていただきました。デザイニングという福岡のアートのイベントの一環で、albusという素敵な場所で。
写真集のアートディレクションを担当してくださった尾原史和さん、albusの酒井咲帆さんと私、の3人でトークショーも。数十人のインティメイトな雰囲気でそれは進み、アフターパーティーもその参加者の方々とグラスを交わす、というとても新鮮なできごとでした。酒井さんは私が岡山に住居を移したころふと手にとり夢中で読んだ『いま、地方で生きるということ』という本でも取材されていた方で、お会いしてほんとうにうれしかった。彼女がそこに静かにいるだけで、これまでどうやって、どう考えて生きてきたのか聞きたくなる。彼女をはじめとする福岡でたくましく場を作り、人をつなげて、つながって行くひとびとの姿が東京がすべてだと思っていた過去の(それはほんの少し前までのことなのだけれど大昔に思える)私の頭のふたをぱかっとさらに開く。ものすごく切れ味のよいメスみたいに、まっすぐに輪切りに。
九州に縁がほとんどなかった私が、こうやって福岡のひとびとと個人的にお話ししたりする日が来るなんて。すべては想像の外にあったこと。人生ってふしぎ。ふしぎで素敵すぎる。
そして、ありがたすぎる。
(いなばちゃん、ほんとうにありがとう)
そのあとはなんだったかな。えっと、そうだ。雑誌Neemの取材を受けました。編集長のtomomiさん、編集のmiyukiさんがはるばる東京から来てくださって。私と、私の岡山での仲間たちを取材してくださり、あと、私とトシオの関係についても(!)取材を。母親であるすばらしい友人たちとは白熱した会話が交わされて、ものすごく楽しく、まるで話し足りない。ちかぢか合宿しようと言い合いました。タルマーリーの渡邊麻里子ちゃん、島田ルウナちゃん、帆風直美ちゃん。
出会えてよかった大切なともだち。
トシオとふたりのことを誰かに話すなんて初めてのこと。牛窓のエーゲ海を見渡しながら、いつもは意識していない「夫婦であるということ」を振り返るとてもよい機会をいただきました。感動して泣いちゃったよ、とちゅうで。
親しい間柄のことをわざわざ言葉にする、という体験は、それはほんとうに濃い行為で、きらきらと光る二人のエディターの情熱なしにはできなかったこと。ポートレイトを撮影することと、インタビューをするということは、共通した何かが多いと思いました。つまり、本物の情熱は人を動かし、皮をぺろりとめくる。
そしてサボテン高水春菜ちゃんが来岡し、『新世界』会場で歌ってくれたのでした。それはとても素敵な時間。そこで私が急に見えたのは!彼女が路上で歌っている姿。それを口にしてみたらできごとはどんどんふくらみ、城下公会堂で歌わせていただけることに(thanks to 岩田さん!!)春菜ちゃんと弾丸で東京から来てくれたおりりんとともに、即席の手作りビラを街でまき、春菜ちゃんは地元のラジオに突然出演し(ああ、昨日見えたのはこの景色だった)、そして、城下公会堂で彼女の声を聴きたくて集まってくれた素敵なひとびとの前で彼女はまた、素晴らしい魂をふるわせて歌いました。涙を流すひとが何人も、いた。この日々を思い出すときにこの歌をいつも聴くと思う、って。
うれしい。すごく。あーーーーーうれしい!!!!!!
すべては細かい根っこのようにからまりあってつながっていて、何かがひとつでも欠けていたら、それらは存在しない。あたりまえのような、でも、奇跡みたいなそのことをいつもよりもさらに強く、思う日々です。唐突に思えることも、突然起こるように見えることも、すべてはからまり潜伏し、当たり前のことのように、静かに目の前に現れる。
みなさん、ほんとうにほんとうに、ありがとう。出会ってくれて、そこにいてくれて。
いっぱい支えてくれてほんとうに、ありがとう。
みんなをあたしも支えられてるだろうか。
大切な家族にもあらためて、感謝を。
なんだか、すべてがうれしくてひとり興奮し涙がでそうな、午前4時。
東京にて。